ゴルトンボードについて
https://m.youtube.com/watch?v=6YDHBFVIvIs
上記の動画で取り上げられている装置は、ゴルトンボード(Galton Board)と言います。(理想的には)ベルヌーイ試行(確率p=0.5で右、1-p=0.5で左)が繰り返されるので、最終的に球が落ちる位置は二項分布に従います。釘の段数を増やせば分布が正規分布に近づく様子を見て取ることもできます。つまり、試行回数nを増やせば二項分布は正規分布に近づくというド・モアブル–ラプラスの定理(中心極限定理の特別な場合)を視覚的に確認できるのです。
二項分布に従うことをもう少し具体的に書きます。たとえばボードの底に左から順番に0,1,2,・・・と番号をつけたとき、釘に当たるたびに球が左にしか跳ねなければ(右に0回跳ねたなら)球は0番に到達します。途中で1回だけ右に跳ねれば1番です。n回跳ねたうちのk回右に跳ねればk番ですね。これは、二項分布の解説でよく使われる例、コインをn回投げてk回表が出ることと似ていますね。いわば、球が釘に当たるたびに、運命の女神がコインを振り、表が出れば右、裏が出れば左と決めているようなものであります。
3段の場合を例に図で表してみました(上図)。 左にしか跳ねなければ0番に到達し、途中で1回だけ右に跳ねれば1番に到達しています。この図の場合、k番に到達する確率は、試行回数n=3、生起確率p=0.5の二項分布B(3 , 0.5)ですから で求められます(たとえばk = 2のとき0.375)。
なお、パスカルの三角形を重ねると、k番に到達する経路の数がわかります。上の2つの図は3段のゴルトンボードと4段のパスカルの三角形です。 この2つの図を重ねると、たとえば1番に到達する経路が3つ存在することがわかります。もちろん、順列や組合せを利用しても経路の数はわかります。
釘を三角形状に並べてゴルトンボードを作製する場合、必要になる釘の本数は何本になるでしょうか。ゴルトンボードの段数が1段、2段、3段、・・・と増すにつれて、必要な釘の本数は1本、1+2本、1+2+3本、・・・と増加していきます。したがって、n段のゴルトンボードを作製するのに必要な釘の本数は、初項1、公差1、項数nの等差数列の和で表せます。すなわち、
となります。上式から、たとえば、10段のゴルトンボードであれば必要な釘の本数は55本、50段であれば1275本、100段であれば5050本であることがわかります。段数を増やすほど分布は正規分布に近づきますが、一方で作製に必要な釘の本数は二次関数的に増加し、作製に必要な労力も巨大になってゆくということです(なお、三角形状以外の形状のゴルトンボードも存在します)。
以上の記事は、ゴルトンボードに関する英語のウェブサイトを参考にして書きました。より詳細で正確な情報を得たい方は英語の解説記事を調べることをおすすめします。また、この記事に書いた内容はあくまで理想上のもので、おそらく実物を作製する際は細かい調整が必要になると思われます。最後に、本記事の内容に間違っている点などがございましたら、コメントで教えていただけると助かります。
更新情報 : 2019.4.1 作製に必要な釘の本数について追記